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先の富士の世界(文化)遺産登録。実に喜ばしい出来事である。日本の富士山が、世界に認められた。富士山は世界に誇れる山になった。まるで日本人である自分の手柄のような気分だ。

しかし、本当そうではない。富士の遺産登録に関して、私は何もしていないし、登録されたところで私の、または日本人の国際的価値が上がるわけではない。

ともすれば、私は富士をテーマに芝居を打つまで、富士のことなど何も知りはしなかったのだ。

歴史も、伝説も、文学も、富士にまつわる文化を何一つ、ちゃんと理解してはいなかった。

幼少より「富士は日本一の山」と仰ぎ見ていたにも関わらず。なにひとつ。

この気分は、東京の五輪開催地決定の時にも味わった。

 

果たして私たち日本人は、「日本が誇れるもの」に対して、どれだけ理解し、自覚できているのだろうか?

そして日本人は、日本をまた日本人を、どれだけ理解し、自覚しているのだろうか?

 

富士は、山だ。山は、大地の出っ張りに過ぎない。その出っ張りをこしらえたのも、我々ではない、自然がそうしたのだ。しかし日本人は、その出っ張りに神を見た。

そうして、古来より現在に至るまで、富士を神体山とした。富士は神の住まう土地であり、富士自体がご神体で、神聖なものとした。だがその一方で、神を利用し、神聖を冒す暴挙を行ったのもまた日本人であった。

今作は、富士を使おうとした者達の歴史が一点に交わる、虚構の歴史劇である。

 

私は、日本人であることを誇りたい。

日本が誇れるものを本当に理解し、自覚したい。

 

そのために、富士を破る。富士のイメージを破壊する。

そうすることで初めて、本当の「富士」の姿が見えてくるのではないか。

■□■ ご挨拶 ■□■  声を出すと気持ちいいの会 主宰  山本タカ

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